作成日:2026/07/24
【企業労務】従業員の無断録音、どう対応すればよい?
会議や面談の場で、従業員が無断で録音をしていた
—そうしたご相談をいただくことが増えています。
無断録音がもたらすリスク
無断録音がなされると(あるいは「されているかもしれない」と感じるだけでも)、機密情報や業務上のノウハウ、アイデアなどが漏洩するおそれがあります。また、自由な意見交換の妨げとなり、就業環境の悪化につながる可能性もあります。
会社には無断録音を禁止する権限があります
就業規則に無断録音を禁止する規定があれば、それに基づいて注意することができます。
また、仮に就業規則に明文の規定がなくても、裁判例上、使用者は指揮命令権および施設管理権に基づき、職場での無断録音を禁止する権限があるとされています(東京地裁立川支部 平成30年3月28日判決)。もっとも、後日の紛争を防ぐという観点からは、就業規則に禁止規定を明記し、従業員へしっかり周知しておくことが望ましいといえます。
「自衛目的」の録音には注意が必要です
近年目立つのが、ハラスメントを受けていると主張する従業員が、自衛のために無断録音を行うケースです。このような場合にも、常に注意や懲戒処分ができるとは限りません。
京都地裁令和6年5月14日判決(国立大学法人京都大学事件)では、労働者としての自己の地位を守るための自衛目的で行われた録音について、懲戒事由には該当しないと判断されました。
この背景には、「言った言わない」への不安があると考えられます。指示や注意が口頭のみで記録に残らない、あるいはハラスメント相談の際に証拠がなければ主張が認められないかもしれないという不安があると、従業員は自衛のために録音せざるを得なくなります。
無断録音を未然に防ぐために
ルールを整備することも大切ですが、それだけでは根本的な解決にはなりません。従業員が「録音してでも証拠を残しておきたい」と感じる背景には、職場の関係性や環境そのものに原因があることも少なくないからです。
無断録音を防ぐ土台として、次のような点が重要になります。
関係の質の向上:日頃から上司・部下、同僚間の信頼関係を築いておくことが、そもそも「録音しておかなければ」という不安を生みにくくします。
- 心理的安全性の確保:思ったことを安心して発言できる環境があれば、録音という手段に頼らずに済みます。
- 言った言わないをなくす明確な指示・指導:指示や指導は、口頭だけに頼らず、内容を明確に、できれば記録に残る形で伝えることが、後々の食い違いを防ぎます。
- 会社側での記録・共有の徹底:面談や指導の内容を、会社側でも議事録やメモとして残し、関係者間で共有しておくことで、「言った言わない」の紛争そのものを起こりにくくします。ハラスメント相談の際も、会社が記録を取る、あるいは録音について同意を得るなどの対応が有効です。
- 継続的なフォロー:指導や面談の後も、放置せずにフォローアップを行うことで、従業員の不安や不信感を早期に解消できます。
こうした日頃の積み重ねが、無断録音という手段に頼らせない職場づくりにつながります。
まとめ
就業規則に無断録音の禁止規定があったとしても、@ハラスメントへの対応など正当な目的があり、A必要かつ相当な範囲にとどまる録音であれば、注意や懲戒の対象とならない場合があります。
従業員の無断録音が発覚した際は、まず「何のために」「どの場面を」録音していたのかを、慎重に確認することが大切です。あわせて、日頃から関係の質や心理的安全性を高め、指示・指導を明確にし、会社側でも記録・共有を徹底し、フォローを重ねることで、無断録音そのものを未然に防ぐ職場づくりを心がけましょう。