研修では、確かにその場で変化が起きます。けれど3か月もすると、日常の忙しさに埋もれて、元に戻って
しまう。そして1年後、また研修を受けて、「そういえば、前にも聞いたな。いい話だな」と、1年前と
同じ気持ちになる。そんなことは、ないでしょうか。
問題は、変化が起きないことではありません。起きた変化が続かず、振り返られないまま消えてしまう
ことです。仕事にも、私生活にも、誰もが忙しい毎日を送っています。管理職になれば、なおさらです。
そして翌年に、また同じ研修を実施する。これが「点で終わる研修」とも呼ばれています。
研修の前・当日・後を一本のプロセスとして設計し、日々の業務の中に、振り返りと再実践を組み込む。
これが「線」でつながる研修です。
さらに、受講した本人だけでなく、上司や同僚も巻き込み、職場全体で取り組む。そして、会社として
研修を続けていく。研修を一度きりのイベントにせず、人材育成を「面」で進める仕組みとして使っていく。
それが、私の考える「面」でつながる研修です。意欲に頼らず、自然にできる習慣になるまでが、研修の
効果だと思います。
村山昇氏は、著書『働き方の哲学』などで、キャリアをつくる要素を「3層+1軸」でとらえています。
いちばん上の第1層は、知識・技能・資格・人脈。その下の第2層は、行動の傾向や態度、習慣。そして
いちばん下の第3層は、ものごとの見方・とらえ方である「観」で、信条や理念、大切にする価値、動機
が含まれます。
この3つの層を貫くのが、「何を成し遂げたいのか」「どこへ向かうのか」という方向性と熱、つまり志向
軸です。村山氏は、第1層と第2層を「処し方」、第3層と志向軸を「在り方」と呼びます。「3つの層を、
一本の上向きの矢印が串刺しにしている」イメージでとらえ、矢印は、業務課題、目標、目的、夢、志、
理想ととらえています。つまりこの矢印は、強い意志であり、目標であり、強い思い、そして会社の理念
です。研修で知識やスキルを身につけても、矢印が通っていなければ、行動は続きません。通っていれば、
その人らしさを生かしたまま、考え方も、姿勢も、行動も、同じ方向にそろっていきます。
「あの人をなんとかしたい」という思いが、人を別人にしようとする話になると、本人は抵抗し、変化にも
再現性がありません。目指すのは、その人らしさを生かしながら、成果につながる行動を増やすことです。
AIが人間の知を超える日が近いといわれます。けれど、本当にそうでしょうか。本当にそうかもしれないし、
そうではないかもしれません。ただ、私は、人間にしかできない想像や、夢見ることから、新しい発想は
生まれてくると信じていきたいと思っています。
皆さまの会社の研修は、点で終わっていないでしょうか。どこから線にし、面にしていけるのか。そこを
考えることが、研修の効果を実感する第一歩になると思います。