人手不足が続く医療・介護の現場で、AIの活用を一気に進めようという動きが始まりました。
政府は、AIを実際の現場に広げるためのアクションプランを、年内に策定する方針です。10月21日に関係府省庁の連絡会議が、22日にはAI・デジタル改革推進会議が、それぞれ初会合を開きました。
AXは「AIトランスフォーメーション」の略で、AIを道具として取り入れ、仕事のやり方そのものを変えていくことをいいます。たとえば、診察中の会話を音声から文章にする、退院サマリや紹介状の下書きをAIが作る、介護記録を声で入力する、センサーで利用者を見守る、ケアプランの案をAIが作る、といったことです。記録や書類作成などの事務作業をAIに任せ、人は、患者さんや利用者さんと向き合う時間を増やす。それがめざす姿です。
医療分野では、診療記録や病床・勤務管理など、病院全体のAX(スマートホスピタル化)を検討します。土台になるのが電子カルテです。紙のカルテをデータにしたものですが、病院ごとに形式がばらばらだと、ほかの病院や薬局、介護施設と情報を共有しにくくなります。そこで、形式をそろえる「標準化」が議論されています。会議では、電子カルテの普及・標準化と医療情報の連携が進んでいるデンマークが参考になる、との提案もありました。負担の軽減や質の向上を踏まえた診療報酬の見直しも、論点です。
介護では、施設だけでなく在宅でも、見守りや記録、ケアプラン作成などへの活用を議論します。介護職員やケアマネジャーの間接業務を軽くして、ケアにあてる時間を確保したい考えです。ケアマネジャーの担当件数の基準や、「生産性向上推進体制加算」の見直しも検討されます。
政府のデータでは、医療機関の約半数がAI導入に関心を示す一方、実際の利用率は2025年時点で1〜2割程度です。問診、音声入力、サマリ作成支援では1割を切っています。介護施設ではICTや介護ロボットの活用が進んでいますが、訪問介護では遅れています。
現場の負担を本当に軽くできる形で進められるかが問われています。そこには、セキュリティの問題もあります。10月には、GMOグループで不正アクセスによる個人情報の流出などが相次ぎました。11月1日には、攻撃側に海外のハッカー集団がいる可能性が高いとGMOが分析している、と報じられました。サイバー攻撃は、国境を越えてやってきます。
健康は、人が最も関心をもつテーマの一つです。
その健康に直接かかわり、個人情報を扱う医療・介護・調剤の分野で、AIに対する心の敷居がまだ高いのは、当然かもしれません。
それでも、ドラえもんのポケットから出てくる便利なひみつ道具を、上手に使いこなせるようになったら。
AIやロボティクスと良い関係を築くには、私たち自身も関心をもち、近づいていく努力が必要なのかもしれません。
人間関係と同じですね。少しずつ、相手の良いところ、強みを知り、お互いの欠点を補い合う。
そのうえで、決して忘れてはいけないことがあります。
災害や急なことで、電気が止まっても、システムが止まっても、アナログでできるスキルと技術、そして、その成り立ちという基本です。突然の停電のとき、どこから復旧させるのか、何が大切なのかという共通理解。現場で、手計算で会計ができるといった基本。
基本を身につけたうえで、システムをうまく使いこなす。それが、これからの現場に求められる姿だと思います。
【出典・参考】
・メディカルウェーブ「医療・介護のAX実装 アクションプラン年内策定 政府」「『病院全体のAX実装』推進策を検討へ 政府」(2026年10月30日号、No.5012)
・GMOリサーチ&AI株式会社「アンケートサイト『infoQ』への不正アクセスによる個人情報漏えいに関するお詫びとお知らせ(第2報)」(2026年10月14日)
・共同通信「GMOの不正アクセスに関する独自報道」(2026年11月1日配信、産経ニュース等に掲載)