「タイパ」は、かけた時間に対する満足度、「コスパ」は、かけた費用に対する満足度のことです。
タイパは、2022年の「今年の新語」大賞に選ばれ、若者を象徴する言葉として知られるようになりました。
では、本当に若者だけのものなのでしょうか。
インテージの調査(2023年、16〜65歳の5,504人)では、約8割が「時間を大切にしたい」と答え、世代差はありませんでした。
JILPTの調査(2025年、正社員7,291人)では、仕事のやり方を「タイパにこだわりたい」と答えた人が、全体の40.8%。年代別では、20代以下が42.5%、30代が49.3%でピークでした。
企業は、若い世代ほどタイパにこだわる人が増えたと見ていますが、本人の回答では30代が最も高く、企業の見方と実際には、少しズレがあるのかもしれません。
なぜ若い人たちは、早送りしたいのでしょうか。私は、コツコツ積み重ねることがいちばんの早道だと思っています。それでも、同業の方の活躍を見ると、結果はすぐには出ないと頭では分かっていても、うまくいく将来を早く知りたいと、思ってしまいます。きっと、若い人たちも似た気持ちなのではないでしょうか。ただ、これは私の推測です。
それを確かめるために必要なのが、洞察力、傾聴、質問力、承認力ではないかと思います。
JILPTの2026年の調査では、会社から必要なスキルが示されていた人は、リスキリングで「スキルを得られた」が88.2%で、示されていなかった人(70.8%)を上回りました。
すぐに答えがほしい若手には、まずゴールを見せます。そして、ゲームのように課題を細かく示し、「いま、どのあたりを走っているか」を伝えます。ステージごとに自分を振り返る時間をつくり、上司は1on1で話を聞き、できたことを認め、声をかけます。
中国のことわざ「水滴石穿」は、小さなしずくも毎日落ち続ければ石に穴をあける、つまり、小さなことの積み重ねが大きな成果になる、という意味です。『菜根譚』後集110にも、結果を急がず、機が熟すのをじっくり待つのがよい、という趣旨の教えがあります。
いまのマネージャー世代も、Windows以降、日進月歩の技術のなかで、たゆまぬ努力と辛抱で道を究めてきたはずです。すぐに成功した人は、少ないでしょう。その経験を若い世代に伝えることも、管理職、経営者世代の役割だと思います。
若手への再定義と時代の鍵
タイパを重んじる若手は、決して冷めているのではありません。
「最短で意味のある成果を出したい」という強い意志の表れなのです。
だからこそ、単に教え込むのではなく、ゴールと道のりを可視化し、対話を重ねる。
これこそが、令和の時代に求められる人材育成の鍵となります。
【出典・参考】
・小林春佳(インテージ)「調査データから読み解く『タイパ』実態」MarkeZine(2024年8月19日)
・労働政策研究・研修機構(JILPT)「働く意識の変化や新たなテクノロジーに応じた労働の質の向上に向けた人材戦略に関する調査(企業調査・労働者調査)」(2025年9月16日)
・労働政策研究・研修機構(JILPT)「労働者の働き方の現状と意識の変化に関する調査(企業調査・労働者調査)」(2026年9月18日)
・吉田浩 著、渡邉義浩 監修『菜根譚がマンガで3時間でマスターできる本』(明日香出版社、2022年9月23日初版)98、99ページ
・三省堂「辞書を編む人が選ぶ『今年の新語2022』」